当サイトにて先月公開した「wanganista的 東京カレンダー東京女子図鑑『綾の物語』の読み方」は、おかげ様で多くの方々に読んでいただいた。そして、12月27日、新シリーズ「東京人生ゲーム」(以下、「拓哉」)も終わりを迎えた。この2ヶ月間ネット界隈を賑わせくれた東京カレンダーへのリスペクトの意味合いも込めて、「綾」と「拓哉」をwanganista.tokyo編集部独自の視点で比べていきたい。

読者のダークで限りなくブラックに近い心を映し出す鏡、「綾」

10月から11月にわたり、SNS界隈を賑わせた「綾」。その完成度について評価する声が多く聞こえてきた一方、綾の立ち振舞と結末に一抹の不安と気持ち悪さを感じた人も多かっただろう。資本主義と競争原理がもたらす人間構造に地方出身の綾がどんどん飲み込まれていく様は、あまりに「負」の面が強かったと筆者は思う。もちろん、共感できる部分は少なくないのだが、「私も綾みたいになりたい!」と思う人なんているのだろうか。上京→出世→転職→結婚→別居→離婚→再会…、という人生、誰も送りたいとは思わないはずだ。
寧ろ、読者それぞれが持っているダークで限りなくブラックに近い部分を映し出す鏡となり、自分自身を振り返るキッカケを与えてくれたのかもしれない。筆者は大学上京組なのだが、綾が上京してすぐの三軒茶屋で吐いた「あぁ、私東京で生活してるんだ」というセリフを見たとき、自分自身も上京時に同じようなことを言った気がして、何か心が苦しくなった。また、最新話では、東京をライブでのアリーナ席に例えこんなことも言っている。

アリーナ席で感じる高揚感、選民意識、優越感は、東京の人が地方に対して感じる意識と似ています。この感覚を知ってしまったら最後、消耗したって、高いお金払ったって、もう地方の立ち見席なんて、耐えられないんでしょうね。(東京人生ゲーム:綾「ねぇ、拓哉。この街の景色は君の目にどう映るの?」

確かにそうではあるのだが、実際文章として書き起こされるとエゲつなさがにじみ出てしまい、そしてどこか自分の故郷を批判されたような感覚に陥り、結果イライラしてしまう。しかし、よく考えれば自分も同じようなことを考えたことはないだろうか…。そう、きっと、綾に対しての苛立ちは、自分に対しての苛立ちなのだろう。

ソーシャル型メディアを意識しつつ、丸くまとめあげた「拓哉」

そして、11月に入り連載がスタートした「拓哉」。綾に比べると楽天的な性格に見えるのは、男女の違いなのだろうか。そして、数々の恋愛と挫折を繰り返した後に自分らしい生き方を追い求めるも、どこか放っておけない雰囲気を出している。
ところが、「拓哉」の特筆すべき点は、そのストーリーがネット上におけるシリーズの評判を果敢に意識していたところではないだろうか。
「綾」のオマージュ記事を書いて人気を博したachicoさんは、麻布での暮らしを語った28歳の拓哉に対し、「自らATM男になりたいのか?」と大きく問いかけた。そしてその後、広尾で暮らし始めた38歳の拓哉は、部下であり彼女である春香との最初のやり取りをこのように語っている。

突如として賑わいはじめたLINEの女からの連絡に「いやぁ、最近モテてさ」と鼻の下をのばしていると、彼女が唖然とした顔で「拓哉さん。そんなんだと、若い女の子たちの格好のATMになりますよ。」とバッサリと警告してくれました(笑)(東京人生ゲーム:上場が見えてきて広尾で暮らす38歳。順風満帆なはずだが?

このとき拓哉36歳、春香28歳…。ということは、春香とachicoさんは同世代ということになる。春香の行を作っていくにあたって意識したのかもしれない。
また、マンションブロガーのDJあかいさんが12月3日より始めた「東京カレンダーの綾は一体どこに住んでいたのか?」連載では、記事から実際の物件を予想し紹介していた。ところが、12月6日に掲載された38歳で芝浦に住む拓哉は、あっさり物件名を言ってしまっている。さらに、学芸大学で住み始めた41歳の拓哉は、不動産クラスタなら絶対に笑ってしまうだろう、こんなことを言ってのけた。

最近、ネットで見たマンションポエムの話で、「渋谷、代官山、中目黒、そして学芸大学」という野村プラウドのコピーを見かけました。無駄に「そして」がついてないなと少しだけ納得できるほど、案外充実してますよ?学芸大学。 この駅名を並べただけのコピーに「祐天寺の立場は?(笑)」というツッコミが多くあったようですが、とにかく学芸大学はバランスのとれた良い街ですよ。プラウドも意味がないようで、深いコピーを書いてきますね(笑)。 あ、残念ながらうちは「プラウド学芸大学」ではありません。(東京人生ゲーム:41歳学芸大学で始めた「他人と比べない暮らし」

「僕の住んでるマンション、予想してごらん?(笑)」と言わんばかりのコメントだ。ここまで来れば、DJあかいさんの「綾」に続く「拓哉」のマンション予想に期待したくもなってくる。
このように、「拓哉」はソーシャル型メディアとしての立ち位置をより意識しながら、読みやすく丸くまとめあげていた。「狂った街TOKYO」というメッセージは、愛しさと切なさと忙しさに満ち溢れた年末の雰囲気と合いキレイに締めくくられており、筆者個人的にはスカッとする終わり方だったと思う。
なお、東京カレンダーWEB編集長の梅木雄平氏が、「拓哉」について解説しているので、こちらも参照されたい。

今後展開されるであろう新シリーズで湾岸エリアの登場に期待

wanganista.tokyoでは、前回の記事以降「拓哉は湾岸に住むのか」と注目してきたが、実はこのことに関連して、先出の梅木編集長からTwitterを通してコメントをいただくことができた。

残念ながら、綾は湾岸エリアで輝かしい生活を送ることはできなかったし、拓哉は東急沿線から「リッチピープル」の多く住む二子玉川へと活路を見出した。特に「綾」の豊洲では、あまりイメージの良い書き方はされていなかったので、ご立腹のwanganisitaも多かったのではないだろうか。
でも、実はそれこそが、wanganista.tokyo編集部の原動力になるのだと痛感した。もっと湾岸エリアの価値を高め、「綾」みたいなこと、二度とないようにしたい。そのためには、湾岸での暮らしを楽しむ人「wanganista」のライフスタイルを発信し、「狂った街TOKYO」において「輝く街WANGAN」を作っていく…。編集部にとって、2016年へ向けた大きな目標と課題だ。
なお、梅木編集長からは、湾岸エリアが「別のシリーズで出てくるかも」とポジティブなコメントをいただいてるので、是非ともwanganistaの東京カレンダーWEB登場を期待したい。そして、筆者は、「狂った街TOKYO」で自分を消耗…、いや、「輝く街WANGAN」で自分を磨き続けたいと思う。